ebayの格安サードパーティー製sphereは「買い」なのか?

先ずはaccumulator sphere のダイヤフラムの変遷について調べてみました。(概略)
1.分解式球形:(LHS用:黒、LHM用:緑)、ダイヤフラム:ELASTOMER単層膜、寿命3年
2.溶接一体型球形(D):(1970年GS以降)、ダイヤフラム:DESMOPAN単層膜、寿命60,000kmもしくは3年
3.溶接一体型球形(U):ダイヤフラムがDESMOPAN単層膜からUREPAN単層膜(寿命80,000km~90,000kmもしくは5年)にアップデートされました。球体の頭頂のキャップ部分に刻印U(また製品のパッケージにUREPANと明記されています)で識別、ただし、すべてがUREPANに置き換わったわけではなく、同じ車種の中でもDESMOPANと混用されています。どのsphereがDなのかUなのかは同じ車種でもグレードによって異なるなど複雑です。
4.溶接一体型球形(M):90年代後半(Xantia Activa以降)、ダイヤフラム:NOK製多層膜、寿命150,000kmもしくは10年、刻印3つの窪みマーク(three dimples)で識別、最初はエンジンベイの中のフロントサスでのみ試用、Xantia最終モデルでは色が緑から灰色(通称銀球)になりました。こちらも上記同様UREPANなどの単層膜sphereとの混用で一気にすべてのsphereが多層膜タイプに置き換わったわけではなく、あくまでも部分使用でした。
5.ソーサー型(仏語 soucoupe):1998年XantiaⅡのメインスフィアから採用、ダイヤフラム:NOK製多層膜、寿命は走行距離200,000km

※上記は主にIH8MUD.COMより引用。ただし、これらのライフサイクルは寒冷なヨーロッパの気候を前提にしたものなので昨今の夏の路上温度が40度Cを超える日本では寿命はもっと短いと思われます。

左からUREPAN球、多層膜緑球、多層膜銀球となります。sphere上のペイント文字や刻印には当然のことですが意味があり、それらの解説ページもネット上で散見されます。

問題のNOK製3層構造のダイヤフラムについては中間層がガス不透過性の材質(0.65mmPVAポリビニルアルコール)で周りの2層(nitrileニトリルゴム)が強度を補強する役割を担っています。中間層のPVAはガス不透過性に強い反面、低温時の屈曲性が弱く、低温で割れやすい弱点がありました。そこで最初はエンジンベイの中にあるフロントサスのsphereのみで試用されたようです。後にソーサー型になったのもダイヤフラムの屈曲性の弱さを補うための形状変更であり、これで堅牢性が大幅に向上したそうです。(出典:xantia007.free.fr, frenchcarforum.co.uk)

左はベルギー製のサードパーティーsphere、右はシトロエン純正sphereのカッタウェイです。純正sphereのダイヤフラムが多層構造なのが見えますでしょうか。(出典:frenchcarforum.co.uk)

さて、結論ですが、NOK製多層膜を用いたsphereはシトロエンが特許を持っているのでサードパーティー他社は許諾なしにNOK製多層膜を用いたsphereの製造ができない(もしくはNOKが他社には多層膜を供給できない)と思われます。(特許番号:フランス9514180 米国5992832) よってシトロエン純正とそのセカンドブランドであるEurorepar以外のsphereは単層膜のsphereではないかと思われます。(実際にI.○.○.S.やLIZ○○TEのsphereはUREPAN単層膜使用との情報あり) したがって、寿命は最長でも5年80,000km~90,000km程度と考えるのが妥当だと思われます。それを承知の上で価格の安さに注目して使うのなら「買い」だと思います。フランス本国ではソーサー型sphereや球形の多層膜sphereを旧型シトロエンにコンバートするTIPSをネットにアップしたり、また、ランクルの掲示板ではランクル100系のAHCハイドロニューマチックサスにシトロエンのソーサー型sphereをコンバートするTIPSをアップしたりする方もいて、sphereのディープな世界に興味は尽きません。(出典:Le club de la Xantia Activa, IH8MUD.COM)

Xantia Activa(sphereを10個も使います)への多層膜sphereの置換互換表(実はActivaのsphereには単層膜のものも多く、アダプター(クラブ会員のみ入手可)を介して多層膜sphereを取り付けるTIPSがあるそうです。
ランクル100系のトヨタ純正accumulator sphereです。これをシトロエン純正の多層膜sphereに換装して楽しんでいる猛者がいます。さらに高価なトヨタ純正AHCフルードの代わりにLDSも入れちゃうそうです。思えば、トヨタには過去セリカアクティブスポーツというハイドロニューマチックアクティブサスの車がありましたっけ。

今回、sphereに関する情報はなぜか英語より仏語の方が有用な情報が多かったです。自分の専攻科目がこんな形で生きるとは思いませんでした。さて、sphereの購入のために自分なりに調べたことをまとめてみましたが、間違い等ございましたらご教示ください。謹んで訂正いたします。

フランスの車総合掲示板CARADISIACからの引用ですが、Toutes les soucoupes de marque Citroen ou Eurorepar sont multicouches.とあります。つまり、All of the saucer spheres of Citroen or Eurorepar brand are multi layered.という意味になると思われます。こういった投稿記事がフランス本国のサイトでは見られ、自分の考えの裏付けとなると思っています。

ebayの格安サードパーティー製sphereは「買い」なのか?」への2件のフィードバック

  1. congさん
    これ程リアルなスフェア情報は初めて拝見しました、有難うございます。
    当方もXanの昔、仲間とのリチャージでDSの18cm位ほど?あるUFOスフェアも攻めましたがどうしてもヘソが緩まず残念だった事があります。
    ボールスフェアの変遷でも特にXan(’97)当時、フロントのサス球/add球が三星対策玉と云う事で長寿命の恩恵は充分感じていまして、リヤにも導入すれば万々歳なんだが・・・!と思ったりしていましたけど、そんな事情が有ったのですね。
    当Xan以前のスフェアの短寿命はよく聞いていまして、日本の技術を投入したら長寿命も可能になるのでは?と勝手に思ったりして例えば日本オイルシール工業等想起していました。
    その後、3星対策玉に就いては、nok関与をチラっと小耳にはさんだ様な気がしていましたが、その通りだったのですね!

    無謀/無節操な当方は、このXanの時 フロントサス球を仕様変更してリヤ球やメインアキューム球に投入し随分長く使っておりました。
    因みに、内圧は共有リチャージキットで変更、リヤサス球用にダンパー穴は小さくし、リヤadd/メイン球用には不要なダンパーの穴を4mm程に大きくして無効にし、結果上手く作動していた様でした。更に欲の深さで内圧を数k高めにし 少しでもソフトに・・・。(笑)

    ボールスフェアからソーサースフェアへの変更は、nokダイヤフラムの屈曲性の弱さを補うためだったのですね!
    確かに直径を2cm程大きくし断面積を30%以上増やしてしてストロークを少なくするのは膜寿命に良い事と思われますが、それにしても上半分の丸みをケチらず下半分と同様形状にしていたら、ボールスフェアのティストをもう少し継承できたかも?と、返す返すも 残念に思うのは勝手なゲ〇の勘ぐりでしょうか?(汗、、)

    あと、ボールスフェアはヘソのネジで膜を上内側に締め付ける様ですが、ソーサースフェアはヘソネジでなく小さな圧入栓の様で、上下溶接や膜固定はたまた内圧設定/Fix方法等も興味が尽きない所です。(笑)

    それにしてもXan三星対策玉から とっくに10年以上経過していますが、サードパーティへの3層膜使用はどうだったのでしょうか?

    ランクル100系にAHCハイドロニューマチックサスと云うのも興味尽きないですね~、AHCメリットより後々デメリットの方が心配に・・・。(笑)

  2. duca900c5様
    いつもいつも私の駄文に丁寧なreplyをいただき感謝のみです。実はこれらの情報を得た理由は「ebayの格安サードパーティー製saucer sphereが多層膜ならば買いたい」と思ったからです。なぜなら、以前のCCQの投稿で「社外品は車害品?」という投稿があり、それらの品質に疑問を感じていたからです。日本語や英語でネットを検索してもsphereの内圧やオリフィス径の情報はあっても意外とダイヤフラムに関する情報がなく、試しに仏語で検索してみたら、情報がドッと出てきて驚きました。どうせ、調べたことなので、皆さんにも有益ならばとアップしました。また、著作権にも配慮して出典を明記しました。日本のNOKが多層膜を提供していたり、天下のトヨタがAHCでハイドロを採用していたり、ランクルのレクサスバージョンのLX600ではハイドロはまだ現役です。(ランクル300系では廃止になりましたが、LX600との差別化andマイナーチェンジのネタとして温存との噂あり。)このSUV全盛時代にランクルのハイドロは悪路走破性向上のみならず、車高を下げると洗車時や乗車・降車時も重宝だとそれなりに評判が良いようです。(クロスカントリーカーとしての信頼性がハイドロ採用によって低下したと見る向きもあるようですが。)ランクルのように世界の紛争地でも使用される本物志向の車で採用されるディバイスです。飾りのはずがありません。ハイドロはそんな優れたシステムです。シトロエンもハイドロを廃止している場合ではありません。このSUV全盛時代だからこそニーズはあるはずです。復活を切に希望します。もしダメなら、ハイドロマニアの私は次期愛車はLX600とも考えています。さて、本題に戻りますが、例のIH8MUD.COMに画像入りでアップされていますが、トヨタの純正saucer sphereもNOK製多層膜が使われています。これはランクル100の発売時期(1998年)を考えるとシトロエンにライセンス料を払っての生産か共同開発だと思われます。むしろXantiaⅡは部分採用だったのでsaucer sphereの全面採用はランクル100系の方が早いです。そう考えるとXantiaⅡやC5Iとランクル100系はハイドロ的には兄弟関係とも言えるでしょう。また、saucer sphereのパテントが2016年11月22日で切れているかもです。Googleで「patent us5992832」で検索してみてください。そう考えるとサードパーティー各社も多層膜sphereを安く作ろうとしてもライセンスの問題ではなく技術的な問題やコスト面で躊躇しているのかも?(実際問題トヨタ純正sphereも決して安くないです。)とか色々な妄想や疑念が私の頭の中で膨らんでいます。最後になりますが、イギリスやオランダ系のシトロエン修理情報は結構日本に入ってきていますが、フランスやイタリア系の情報は入ってきていないように思います。結構リンクフリー・引用フリーな心の広いサイトが多いので、紹介できたらと思います。それらの貴重な情報を商売にする方も多い中、適切な修理方法やモデファイ・アップデートの方法を広めて貴重な車がスクラップにならないように啓発活動を行っている姿には強く共感します。xantia007.free.frなど良い例です。私もすごく助けられました。

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