シトロエンの墓場

たしか会社名は西武とは違う名前だったので、表向きは別会社ではあるようですが、スクラップの大半はシトロエンだったし、それ以外にはサーブなども少しあったので、西武と深く繋がっているらしいのはあきらかでした。
ようやく路上にBXが走りだしたころで、そこに山積みにされているのはそれ以前のシトロエンばかりでした。
広い空き地のようなところに、乗り手を失った相当数のGSやCXの残骸が二重三重に積み上げられ、それより数は少ないもののDSやSMなども何台もあって、全体の数も数十台規模でした。
なんとも壮絶な光景でしたが、当時よりいま考えたほうがゾッとするようで、途方もないところへ行ったものだと思います。これもCCJの人に連れられてのことでしたが、なぜあんなところにすんなり立ち入りができたのかとも思いますが、おそらく当時は何事も今ほど厳しく規制されない時代だったということが大きいでしょう。
サビが出はじめていたり、塗装もつや消しのようになった車体が圧倒的に多かったけれど、まだ積み上げられていない個体の中には、この車のどこが悪いの?と聞きたくなるほどきれいな、まるで昨日までナンバーが付いて走っていたようなものもあって、痛ましく、唖然とするばかりでした。
輸入元はトラブル回避のため中古販売をできるだけ避けて、人知れず廃棄しているというようなウワサを聞いたこともありますが、まさにその証拠となるような現場でした。

驚ろくことに、小屋番のような人に声をかけ、積み上がった車体を指差して、欲しい部品などを告げるとすんなり応じてくれ、エッサとばかりによじ登っては無造作にパーツを外していたのを覚えています。おそらく、今では貴重品で手に入らないCXのメッキのドアミラーなども、ここでなら楽に手に入ったと思いますが、当時はそんなことも知らないから、惜しいことをしたと思います。
私が唯一ゲットしたのは、だんだんにプラスティッキーになるCXのCピラーのカバーですが、まだ金属製で立派だった頃のものが欲くて、Prestige用のそれを馬鹿みたいな値段で買って帰りました。
とにかく、いまから思えば文字通り宝の山で、貴重なSMのパーツなども車体とともに処分されていったのかと思うと、もったいなくて胃がキリキリするようです。
タイムマシンでもあれば、みんなで行って、入り浸りで宝探しをやることでしょう