
今年3月のとある木曜の午後、突如、かつて聞いたことのないような猛々しい、地響きのするような音が近づいてくるから「何事か!」と窓へ駆け寄って外を見ると、なんとカーグラなどで見た覚えのある、戦前のブガッティのような形のクラシックカーが自宅の前を走り抜けて行きました。
青いボディ、むき出しのタイヤ、ドライバーはゴーグルをはめ、昔のパイロットのような出で立ちで、バリバリとあたりの空気を引き裂くようなすさまじい爆音を撒き散らしていくのは、とっさに目の前の光景が信じられないようでした。
あっという間のことで、むろん写真を撮る余裕などありません。
すぐにカーグラはじめクルマに精通したHさんにLINEすると、しばらくして、それはブガッティではなくどこどこの何々だろうという情報が返ってきました。
その後のお茶会でもそのことが話題になり、その車は毎年5月に開催されているイベントの常連だそうで「今年もやりますよ、、」とのこと、Hさんは当然行くようで、朝早いなら御免被りますが、18時からというのでSさんと連れ立って見に行ってみることに。

会場は福岡市のど真ん中の、リッツ・カールトン福岡の奥に隣接するスペースで、そこに1965年までに製造されたクラシックカーが集結しており、だれでも自由に見て回れるというわけで、歴史的な名車の数々を間近に詳細に眺めることができました。

会場の一角は、飲み物や軽食がふるまわれてオーナー&関係者の社交場のような様相を呈していましたが、それでいて一般の入場見学にも開放されているので、それなりの賑わいと熱気がありました。

普段目にすることのない貴重で歴史的な車ばかりが居並び、翌日は熊本県阿蘇に向けて市街・高速・山道を含む280km、さらに日曜日は105kmのコースを走るという3日間にわたるイベントだそうで、果たして全車完走できるのか、、。
普段この手のイベントにはあまり興味が無いけれど、今回はなんとなく上記のような流れもあり行ってみたわけでしたが、その甲斐あって戦前のブガッティの実車を数台同時に見られるなど、大変貴重な体験になりました。

ほぼすべての車にはナンバーが付いており、公道を走ることもできるらしいことも驚きでしたが、多くの車はオイル漏れの心配があるようで、会場の人工芝を汚さぬよう、各車の下には広いシートやトレーが差し込まれているあたり、日頃の苦労や現実が偲ばれます。


Hさんが車に関してタダモノではないことは長年の交際からよく承知していますが、なんと、この日は独自の出場車リストのようなものを準備してきていており、写真と説明文に加えて、余白には直筆で特徴や疑問点などが細かく書き込まれており、強いビル風の吹く中、その資料と相照らすように一台一台(パンフレットには64台と記載)入念に確認しつつ、我々にもあれこれと説明してくれるなど、まさに水を得た魚状態、さながら博物館の学芸員といったところでした。
あれだけ広範に車の詳細を捉えている人物は、あの会場でもそう容易くはいないのではないか?、、と思いました。
ご本人曰く、できることならオーナーに接してあれこれ質問を投げかけたいとのことでしたが、大半のオーナーは社交エリアに張り付いて歓談に興じており、あまり目的は果たされなかったようですが、その微に入り細を穿った問いに難なく答えられる御仁は、オーナーといえどもそう多くはないのでは?と推察されました。

そんなHさんに「この中から一台もらって帰るとしたらどれ?」と聞いたら、一見して地味な4ドアセダンであるランチア・フルヴィア(だったか?)という、これまた渋すぎるアンサーで、へぇぇ!と唸りました。
ちなみにこの車はシトロエンGS/CXに先んじて、1960年代にボビン式のスピードメーターを採用したとかで、室内を覗いたらなるほどそのようなものが確認できました。
私はというと、ベタな答えとは思いつつ、迷うことなくこの色この形のブガッティでした。

私の目には突出して斬新でカッコよく、これ以外にないという完成された美しさにホレボレするし、その色もふくめてコレ!でした。

全体を通じて感心したことは、上記のようにガンガン走ることを前提とした車達であるためか、いわゆる床の間に飾るように過度にピカピカにされたコンクールデレガンス風ではなく、ほどほどに走っている故の野生を保っており、そこが一層自動車臭く、その感じがいかにもカッコいいなぁ!と思いました。
シトロエンが一台もなかったのは残念でしたが、目の保養になりました。


































