6月福岡お茶会報告

久しぶりに問い合わせの連絡があり、新しい方が参加されました。
車はなんとSM 1971年型の2.7L 5MT
初参加の御方への歓迎と敬意が働いたのか、普段のような馬鹿話に逸脱することなく、閉店近くまでクルマ談義に終始しました。
一夜明ければ時おり激しい雨模様となり、今回は上手い具合にお天気もにも恵まれました。
くだくだしい説明は無用ですので、主に写真だけ掲載します。

中央のナンバーはオランダで走っていた時のものとか。
ただただ見とれるしかない美しさの極まるサイドビュー。
サイドにはウインカーはおろか、助手席側にはドアミラーさえも無い、純然たるヨーロッパ仕様。
まったくヤレのないシートやハンドルなど、これだけのコンディションはきわめて希少と思われます。
6灯式のヘッドライトは外側からロービーム、ハイビーム、最も中央寄りはドライビングランプの由。
ボディラインに連なる美しいプレキシグラスの隅には「CIBIE」の文字が。

静伝記

2CVの作業の必要からホームセンターに行くことになり、久しぶりにducaさんのC5に同乗させていただきました。

いまさらですが、ducaさんはメカに通暁されているだけでなく、とりわけ乗り心地に対するこだわりと研究・実践において、クラブ内では最も研鑽を積まれているおひとり。

さて、車の乗り心地や質感はものの数メートル、タイヤが少し転がっただけで感知できることがあり、すぐに「おっ!」と思いました。距離が進むにつれ、以前との違いをいよいよ確信、ご自身も控えめながら敢えて否定もされませんでした。

ふっくらして、角が丸く、大小の凹凸やうねりを乗り越えるたびにフワリと波に乗り、恰幅もある。すみやかに元の姿勢に戻る始末もあって、酩酊的に揺れるわけでもない。

タイヤは比較的硬めの銘柄、さらに交換時期も遠くないと思われる状態で、私は日頃から乗り心地において、過度にタイヤに依存するのは違うように思っているので、その点も大いに得心のゆくところでした。

細かいことは秘事かもしれないし、そもそも私には説明しろと言われてもできませんが、まるで家元の茶室に招かれ、その結構なお点前に与ったようでした。

一説には、ハイドロらしさを堪能するには、リアがマルチリンクではないほうが好ましいと見る向きもあるようで、なるほど一理あると思いつつ、こういう体験をするとまた混迷を深めるばかり。いずれにしても、ハイドロの美味に舌鼓を打ちました。

これだけハイテクが進歩を極める中、ハイドロの真価がどこにあるのか?とあらためて問うてみると、私なりの答えは、その乗り味の中に漂う「威厳と品位」ではないか…と思ってみたり。
これは、電子の力が最も苦手な領域だとすると、今後もなかなか手に入らないでしょうね。

それから-5

今回は電気編です。
さほど深刻なものではありませんが、次のような不具合とその処置のあらまし。

1,排ガス温度警告灯
フロントマフラーにつながっていたセンサーが、マフラー交換によって常時点灯するように。
聞くところでは、現在の法規では不要になっている由で、強いて取り付ける必要はないとのこと。
この警告灯は約12mm四方の正方形でスピードメーターの左下にあり、そもそも暗い2CVの室内にあって、この警告灯ばかりがやたら煌々と光るのが目障りで、とりあえず黒いゴムクッションを両面テープで貼りつけて視界から消していました。いずれ線をパチンと切ってしまえばいいだろう…ぐらいに考えていたところ、ducaさんは決してそういうことに同意されません。
センサーから伸びる線の先に丸端子を付け、エンジンルーム内のしかるべき場所にネジ止めして電気的な流れを始末をされると、なんと、エンジン始動後数秒は点灯し、やがてスッと消えるという本来の感じになったのには、いやはや参りました。

これが常時点きっぱなしではたまりません(とくに夜は眩しいほど)。

2,パーキングブレーキ
レバーを引けばダッシュボード上の小さな丸ボタンが点灯し、解除すると消える、、、筈のものが消えないという症状。
その背中を少し押しつけると消えるものの、離せばまた点灯するので接触の問題だろうと思われました。
奥にスイッチらしきものがあり、解除時レバーの突起がそれを押すとランプが消えるという仕掛けらしく、そのかかり加減がこころもち足りないことが判明。
突起の前に太めのタイラップを巻きつけて、押すポイントを数ミリ付け足すことで解決しましたが、だいたいこの手の不具合は、点くべきものが点かず、点いてはならないものが点いてしまうというもので、次も同様。

(赤)消えなかったランプ (青)Pブレーキのレバー (緑)巻きつけたタイラップ 

3,室内灯
何事も簡素で最低限を旨とする2CVゆえ、室内灯はあるにはあるもののON/OFFは手動で、ドアの開閉に連動はしていません。
巨匠はそれを解決されたかったようで、もともとある室内灯のすぐ横に、もうひとつの室内灯がつけられていましたが、これがまったく点灯する気配もないから、夜の乗降時に広がる暗闇たるやひとしおで、メガネの場所やちょっとしたモノの位置さえ容易には見定められません。
あるときわずかの加減で、ほんの一瞬サブリミナルみたいに光ったことがあり、それを告げるとすぐに原因を探られ、ほどなくドア開閉に対応したスイッチらしきものを探し出して調整をされると、いい塩梅にON/OFFするようになりました。
ドアがストライカーを離れた瞬間、間髪を入れず点灯するようになったのはありがたいけれど、強いて難を言えば、その光色はひんやりした青紫系で2CVにはそぐわないもので気になります。とはいえ実用上の不都合はないのだからまずは喜ぶべきですが。

なぜか2つある室内灯に、はじめは首をひねりました。

4,クラクション
夜、青信号だというのにまったく動く気配のない前のタクシー。
お客と話し込んでいるのか、なんとそのまま再び赤になるに及んで、やむを得ずクラクションを鳴らそうとしたら「あれ?」、一向に音が出ず、このとき初めて故障していたことを知りました。

〜というわけで通電のチェックをされたところ、電気は来ているからホーン本体の問題だろうということになり、これを外してあれこれ試されます。
中が固着しているのだろうという見立てですが、分解できない作りのため音色にこだわらないのであれば、ヤフオク等で入手できるバイク用中古品で良いということになりました。
…といいながら、もしやという挑戦がもうしばらく続いて、ハンマーで軽く叩いて一定の衝撃を与えたり、ひとつのネジが発音ポイントを調整するためのものだそうで、これを楽器の調律のように回しながら電気を流すなど繰り返しているうちに、一念が通じたのか、クーという小さな音がでるように。
テスター経由の細い延長ケーブルだったこともあり、豆腐売りのような哀愁ある音色だったのが、本来の線につなぐと「プワーッ!」と尻餅をつくような威勢の良い音に変わり、びっくり仰天とともに解決と相なりました。

チェック、調整、チェック、調整の連続。

もはやducaさんにおかれてはわからないことはないようで、この電気編をまとめて投稿するつもりと伝えたら、あまりに低レベルでそれには同意しかねるというような渋面をされました。
しかし私にしてみたら驚きの連続であるから、あえてご意向に背いて投稿することにしました。

(オマケ)ducaさんの電気関係の部品ケース。思わず二度見して、写真を撮らせてもらいました。

車検書類

今週ユーザー車検に行ってきましたが、従来との違いなど。

A5の小さな車検証は見づらくなって、良くなったように感じませんでしたが、変化を実感できることが初めてありました。

それは書類に関してで、まずユーザー車検で必要な書類は以下のとおり。
「車検証」「自賠責証書」のほか、当日陸運支局へ提出するものは、以下の4種類になります。

(1)自動車重量税納付書
(2)継続検査申請書
(3)点検整備記録簿
(4)自動車検査票

上記の書類は陸運支局で揃うから当日でもいいのですが、これから緊張の車検を控えているというのに、住所氏名から登録番号、車体番号など間違ってはいけないことをあちこち記入する必要があり、それを避けるためにいつも予め書類を準備しておいて、自宅で記入しておくようにしています。

実は少し前に車検に行かれたCCQのKさんから、書類に関して一部新しくなっていると聞いていたのですが、慣れないことは不安なので今回まで従来の方法で臨みました。

で、検査が無事に終わって、新しい車検証を手にしたところでようやく余裕ができ、その機械を見てみることに。
QRコードを読み取るようで、次回の練習を兼ねて、たった今受け取ったばかりの車検証のQRコードに読取機をかざすと、書類選択の画面になって、なんと上記のうち(1)(2)(4)がザザーッと出てきました。
しかもそこには車検証にある住所、氏名、登録番号、車体番号、原動機の型式などが印字されているのには目を丸くしました。

(3)以外は、通常であれば提出して手許に残らない書類ですが、検査終了後にQRコードから出したため、持ち帰ることができました。

(3)の点検整備記録簿は従来通りだから100%ではないものの、面倒な書類書きの大部分が免除されるのは大いに有り難く、次回から期待できそうです。

話は前後しますが、ライン検査前の目視検査では、メーター内のシートベルトやPブレーキなどの警告灯が正しく作動するかどうかを、検査官は顔が真横に来るほど入念に確認する他、フロント・ドアガラスの色、リアのシートベルトが左右きちんと揃っているかどうかまで神経質にチェックしていました。

コース内では、終盤の下回りの検査の際、これまでは大地震でも起ったのかと思うほどやたら前輪が上下左右に揺すぶられて、車が壊れるのではないか!というほど激しかったのが、今回は電光表示に「ハンドルを左右に動かしてください」というものに変わっていました。
控えめにやったら「もっと大きく!もっと!」といわれて、エンジンを切った状態でこれをやらされるのはイヤですが、それでも以前よりはマシになりました。

はじめは検査官の体力消耗軽減のためかと思ったけれど、もしかしたら「あれのせいで車がおかしくなった、責任取れ!」というようなトラブルがあったのかもしれず、実際そう言われても不思議ではないほど手荒な検査だったので、これは改善と見るべきですね。

平日の第4ラウンドは最も混み合わないところを狙ったつもりでしたが、予想に反して大変な混みようで、強い日差しの中、コース前に並んだまま40分以上待たされて疲れました。
月の最後の週だったことも関係しているようで、やはり月末近くは避けたほうが良さそうです。

それから-4

またまた2CVネタで失礼します。

お茶会にもなんとか初参加を果たしましたが、やはりエンジンが止まる症状が再発することが判明、これが喫緊の課題となりました。

始動後しばらくは順調なものの、15分なり30分なりすると、急にアイドリングが変調をきたしてエンジンが止まってしまうという、甚だ困った症状です。
信号などでアイドリングがおぼつかなくなると息も絶え々々になるから、アクセルを踏み足すかチョークを引かないと止まってしまい、これが出始めると停車するたびにヒヤヒヤさせられます。
キーを捻ればなんとかエンジンはかかるから、レッカーを呼ぶ事態には至らないものの、チョークをずっと引いてごまかしながら家に辿り着くしかなく、これでは到底楽しめません。

ducaさんに相談すると、この件でも鋭意ご尽力くださって、あれこれ原因を究明、キャブの調整やらなにやらでずいぶんお手間をかけました。

主治医のメカニック(2CVにも詳しい!)にも意見を仰ぐほか、ducaさんのほうでもネットやCCQ関東のNさんの豊富な知識や経験談なども踏まえながら、何日にもわたって原因究明・調整・試行錯誤などに打ち込んでくださいました。

そのいちいちを書くのも徒に字数を増やすだけで、メカに疎い私では、さほど正確なことを伝える自信もないので省略しますが、ときに長いドライバー持参で試走しながら、何度も道端に寄せてはボンネットを開けて調整するといったようなことも行いましたが、人の視線はあるし、真横をパトカーがかわしていくこともあり、お咎めがあるか?と思ったら何も言われませんました。

巨匠の愛車とはいえ、晩年は長く入院されるなど、自由に車に乗ることが難しくなられ、ついにはナンバーも廃されて数年不動状態であったためか、一例を挙げるとエアクリーナーなど、中のスポンジが劣化してボロボロの粉状になっているなど、手を入れるべき箇所が散見される状態だったことも事実です。

そのひとつ、動かない燃料計は、電気的なチェックによってタンク内のフロートセンサーが原因だろうというところまで追い込んだのですが、2CVは床下のガソリンタンクをはずさないとこれにアクセスできません。
で、タンクを外すにはある程度ガソリンを抜き出して軽くする必要があり、ポンプを買い、ホースを準備し、ducaさんはご自身のスロープまで持参されて少しずつ歩を進めますが、ひとつ事だけでもあっという間に時間が流れて一日は終わってしまい、これを何回も、何日も、粘り強く繰り返すことになりました。

ducaさんご持参の安全なタンクへ可能な限りガソリンを抜き出した後、いよいよ下に潜ってタンクを取り外す作業開始。しかし単純にネジを緩めれば終わりとはいかない、なかなかの難作業でした。

下にもぐっての作業(私は見守るだけ)を経て、ついにタンクが外れて中のフロートが取り出されると、果たしてその内部はものの見事に断裂しており、電気が流れないのだから逆立ちしたって針は動くはずもないと深く納得。

それを持ち帰られてハンダ付けされ、後日、取り外しと逆回転の作業を経て、ついに針が動き出したときは思わず拍手したくなりましたが、マフラー交換からこちら、すべてがこういう積み上げと繰り返しでした。

(左上)床下にある燃料タンク。(右上)外された後は異物が入らぬようテープを貼っています。(左下)フロートセンサーの電気が流れるべき金属板がものの見事に断裂していました。(右下)分解し上部を外されたキャブレーター。掃除のため、淡いピンク色のガソリンをすべて抜き取ったところ。

エンジン不調に話を戻すと、数回にわたりキャブ内のスロージェット(アイドリングにきわめて重要なものらしい)をはじめ、精密な箇所を丁寧に掃除しましたが、それでも直らず、ついには上部をバラしてのクリーンアップ、さらにはキャブの調整に一層注力されました。

ネット情報もかなり調べられた由で、キャブレーターのパイロット・スクリューを基準値に戻して本来のセッティングにリセットするところから始められ、頭痛がしてくるような排ガスにも長時間まみれながらの作業です。

黙々とキャブ調整を繰り返されるducaさん。床に転がるのは、燃料タンク脱着時に使ったポンプやホース類。

そしてついに、40〜50分にわたる暖機および試走でも止まる症状がなくなり、さらに夜一時間ほど走ってみたところ、アイドリングはこちらの不安をよそに淡々と安定するようになって、どうやらこの問題も克服できた…ように今のところ思っています。

アイドリング不調が消えただけでなく、エンジンの波長にはどこか健康なトーンが加わったように感じられ、発進の際もすんなりクラッチミートできるというオマケもつきました。

オマケはそれだけでなく、強い排ガス臭やガソリン臭が無くなった…といえばウソになるけれど、かなり軽減した感じです。
もともと2CVは現代の車に比べれば、どちらかというと古いオートバイ的というか、常にそういう匂いとか機械的野生と共にある車ではありますが、とはいえあれはさすがに異常なガスが漏れ出ていたらしいと、今にして思われます。
尾籠な例えで恐縮ですが、内臓疾患の人が吐息まで臭くなるようなものでしょう。

オートバイといえば、ducaさんの趣味をシトロエンと二分するもうひとつが、イタリアのモーターサイクルの名門ドカティで、これを長年愛用され今も尚現役でいられるのですが、その貴重なノウハウが2CVの整備において、わけてもキャブレーターの取扱や調整などで遺憾なく発揮されたことは疑いようもなく、そういう恵まれたご縁が身近にあったことは感謝に堪えず、私も2CVもその幸福を喜んでいるところです。
また有効貴重なご助言をくださった由の関東のNさんにも謹んで御礼申し上げます。

まだぜんぶ終わったわけではありませんが、とりあえず今回はこれぐらいにしておきます。

止まらないようにと期待を込めながら、夜の試走にまた出発。

ご報告

5月お茶会には、期せずして2台の初登場が揃いました。
一台はすでにご案内している2CVですが、もう一台はKさんが先月C4から買い換えられたC3エアクロスです。

走行15000kmに満たない、ピカピカの極上車でした。
詳しくはわかりませんが限定車だそうで、普通のモデルとは細部があちこち異なる仕様のようです。

というわけで、久々に試乗会となりましたが、2CVは後ろに大人を載せても、すこし加速が鈍るくらいで大過なくそれなりに走れることがわかり、「パワーはないけど力持ち?」であることがわかりました。
多分に社交辞令もあろうかとは思いますが、乗り心地の良さとシートの座り心地の良さをほめていただきました。

次いでC3エアクロスにも乗せていただきましたが、外観から想像するより室内は広く快適で、安心してどこまでも行けそうな雰囲気です。
乗り心地は良好、居住空間には縦方向の余裕があるし洒落ていて、大きなC5エアクロスでなく、これでよかったかなぁ…という印象。

C3エアクロスはいうまでもなくBセグメントのC3をSUV風に仕立てた車だから、本来コンパクトカーの部類ですが、とてもそうは思えないほど堂々たる存在感があり、しかも独特なほんわりした可愛らしさがありました。

ビジュアルに関して個人的な主観を述べるのはどうかと思いますが、C3/C3エアクロスは、マイナーチェンジで顔つきが変わりましたが、私はいずれもMC前のおっとりしたやさしい顔立ちが好みです。
おそらく、C4/C5Xの睨み顔に沿ったものにすべく手を入れられたものと思いますが、せっかく可愛いらしく生まれてきたC3/C3エアクロスに、わざわざ厳しい表情をさせてしまった観があり、どこか不自然な印象を覚えます。
人それぞれの感じ方ですが…。

それから-3

このところ少しずつ走ってみるようになり、最近の様子など。

エンジン調整、マフラー交換、ヒーターダクト類の締め付けなどを経て、とりあえず問題なく走ることができるまでに。
エンジンストールについては、先月のことでしたがT氏のご子息が所用で福岡にお出での際、「ちょっと見てみましょう」ということで我が家に立ち寄られました。

始動性はよく、ほとんど一発で掛かるのに、走行すると信号停止などでストンと止まってしまうのでアイドリングの調整かと思ったら、そちらには一切手を触れず、キャブ調整だけササッと手際よくされました。

慣れた感じでキャブ調整をされました。巨匠からよほど鍛えられた様子が伝わります。

これが適確だったようで、以来まったく止まる気配はなくなり、やはり長年扱い慣れた人はさすがです。

その後、マフラー交換という「大作業」を終えてようやく走り出したところですが、爽快な部分と困った部分、一長一短といったところでしょうか。

爽快なのは、ともかく理屈抜きに走って楽しいことで、運転そのものの喜びを満喫できます。
長いことMTから遠ざかり、安楽快適なAT車が当たり前になったことと引き換えに、運転そのもののダイレクトな楽しさの相当な部分を感覚として少しずつ忘れてしまっていたことに、あらためて気付かされました。

誰かの言葉によれば「車の運転はこの世で最も楽しい行為のひとつ」だそうで、それは充分に自覚しているつもりでしたが、実際は2CVにパチパチとほっぺたを叩かれて目が覚めた気がします。
のみならず、AT車は要するに楽でヒマなので、つい重箱の隅をつつくようにアラ探しみたいなことばかりやっている自分にも気づきました。

1本スポークのステアリングは、たしか真下に向いているはずですが、DS風に左斜めにされているあたりは巨匠のこだわりではないか?と思ったり。

シートはGSと同じく本皮に張り替えられています。ほどよい滑りがあって乗り降りがスムーズです。横幅は狭いものの縦方向は余裕があり、一方ステアリングはかなり寝ています。

乗り心地の良さはやはり特筆すべきものがあります。
通常2CVに乗るということは、表面的には盛大なエンジン音やギアのノイズ、車体のいたるところから発せられる雑音の渦中に身を置き、駆動力のON/OFFにも大きく影響を受けるので、どうしてもそのあたりが目立ちますが、たまにうねりなどがあるとふわ〜んと路面をいなしていくのは、ハイドロと同様でなかなかのものです。

ゆるい下り坂などで、ニュートラルやクラッチを切って空走させると、シトロエン特有の浮遊感が顔を出してくるのは、う〜たまらん!という気になります。
この特定の条件だけでいうなら、我が家の車の中で、最も乗り心地のやわらかなクルマです。

ducaさんのご協力で苦心惨憺の末に交換できたマフラーが静かに光っているような…。

もちろん良いことばかりではなく、現代の気密性の高い洗練された車内空間に慣れていると、なにかと音はうるさいし、快適装備は皆無、エンジンから発せられる排ガスその他の匂いが鼻につくなど、ラクではない点があることも事実。

また、受け渡し直前に動かなくなったという燃料計は、乗っていれば何かの拍子に直るのでは?という淡い期待も虚しく、頑として動く気配はなく、これも今後の課題として残ったまま。

久々のイエローバルブ

また当たり前ですが、センターロックなどとは無縁だから、ひとつひとつすべてが手動、車を離れるとなるといちいち手間を要します。
それは仕方がないし、2CVがリモコンでパシャッとロックできるようでは、却って興ざめですが…。

片やC5-acではエンジンを切ると同時にATはPになり、パーキングブレーキまでかかってしまうという親切ぶりだから、その差には激しいものがあります。
それでも、MTがこんなに痛快なものだったかと思うと、ラクなことと楽しいことは、まったくの別モノだということが歴然です。

最新のシトロエンのロゴマークの元になっている古いマークがブレーキとクラッチのペダルに。間にあるのはステアリングシャフト。

AT車のパドルシフトなどは、一向に楽しさがわからないからDレンジ以外まったく使わないのですが、やはり全身を使ってドライブに参加するMTは理屈抜きに面白く、どこかゲーム感覚でもあり少しも苦にならないのは不思議です。

すでにAT車にお乗りの方が大半を占める中、ひとりこんな気焔を吐くのもどうかとは思いつつ、まあ正直なところなのでお許しください。

なんとか動き出した2CV、…まずはこんなところです。

40年近くボディ左側を壁に寄せて保管されていたためか、塗装は左右で状態が異なっており、このようにマスキングをして夜な夜なせっせと磨きましたが、やはりポリッシャーがないと手作業では限界を感じます。左のほうがはるかにきれいです。

4月はお茶会に乗って行こうと思っていましたが、あいにくの雨模様で断念しました。

むかしあるクラブ員の方が、見知らぬ人から「これV6ですか?」と尋ねられて大笑いしたというエンブレム。

天職

昨夜NHKで放送されたドキュメント『時をかけるテレビ 池上彰 プロフェッショナル 一徹に直す、兄弟の工場』が面白かったのでご紹介。

広島県の福山市に、神の手を持つといわれる自動車整備士のベテラン兄弟の修理工場があります。
2015年に放送されたもので、取材当時、兄弟は60〜70代ですが、現在も現役の由。

車種を問わず必ず直せる工場で、長州人特有の真面目で、仕事に深い矜持があり、手慣れた仕事に安住せず、常に新しいことへの勉強も怠りません。
業界専門誌を毎月13冊も楽しみに読んでいるとか!

外観は至って地味だけど、リフトは何台もあるし、地下も掘ってあるし、なによりあらゆる機材が所狭しと整っているのは驚くばかりで、おそらく出来ないことはないのでしょう。

儲けの多くを設備や道具にまわしているのだそうで、この兄弟にとってまさに天職。
あんな工場があればなぁ…と羨ましい限りです。

車種も内外新旧一切不問、軽自動車からフェラーリ、ダンプカーまで、なんでもござれ。
シトロエンもチラッと数秒間画面に映りました。

NHKプラスで見られますので、よかったらどうぞ。