
C5エアクロスは購入から5年半乗って、2026年5月に手放しました。
距離はさほど伸びず約17500kmでしたが、振り返ってみて心に残ったことなど。
一般に、SUVは大きめのボディや腰高な重心のためか、同クラスセダン/ハッチバックに比べると、足は比較的固めの設定になるそうですが、C5エアクロスはPHCという特殊ダンパーを用いることでソフト方向に躾けられ、さらに高速巡航を得意とするあたり、シトロエンらしさの基本はしっかり引き継がれていたように思います。
2Lのクリーンディーゼルは燃費が良いだけでなく、予想以上にパワーがあったことはかなり意外で、加速性能は私がこれまで乗り継いだどのシトロエンよりダントツ1位だったことが今も印象に残っています。
信頼性についてはたかだか2万km以下で総括的な話ができるとも思いませんが、とくにトラブルやそれらしい気配もなく、平穏に過ごせたことはありがたく、この点ではシトロエンもようやく汚名返上して現代の基準に足並みを揃えたといってもいいのでしょう。
強いて云うなら、夏場だけの症状として、ハンドルの左右切り始めに床下からコクッというわずかな音が感じられましたが、少しでも車体の熱が下がるとしなくなるし、夏以外ではまったく出ないもので、調べてもらったものの原因の特定には至りませんでした。感じとしては、電気的な信号などの動作時に発するものでは?と思いますが、走行に支障はなく、あまり細かく追い回さないほうがいいように感じる程度のことでした。
(もうひとつ、購入いらい悩ませられたのは、車載インフォテイメントとスマホの相性が悪いことでしたが、これはスマホ側の問題で、iPhoneに差し替えることでウソのように解決したことは以前書きましたが、車体側の問題ではありませんでした。)

走らせての印象としては、ハイドロと同列に比較することはしないとしても、やはりシトロエンの系譜を感じさせるフワンとした癖というか揺れ方が踏襲されており、そこに冒頭にも書いた強力な加速性能(と燃費性能)が加わっているのが特筆すべきところだったと思います。
静止から動き出しの瞬間こそ少しモタっとしたところがあるものの、タイヤが回りだせばみるみるパワーが湧き上がり、50km/h〜100km/hあたりの中間加速はシトロエン基準では「強烈」で、軽くアクセルを踏んでも体の血がスーッと後ろに移動するようです。
しかるにC5エアクロスを語る動画などでは、話題は専らPHCのことばかりで、このたくましい動力性能がさほど話題になっていないのが不思議なくらいでしたが、それだけ車全体の平均性能が上がっているのかもしれません。(ちなみに2012年ごろ、マツダのCX-5がデビューした当初、2.2Lディーゼルの発するパワーが4Lガソリンエンジン並などと言われて、カーグラなどでもかなり話題になっていたことを思い出しますが、やがてそれが普通になったということか?)
ちなみにAIのCopilotに、C5エアクロスの2.0ディーゼルの0〜100km/h加速は何秒か?と聞いてみると8.4秒とのこと、これは日本に正規輸入されなかったC6の3.0HDiが当時最速のシトロエンと言われましたが、それが8.5秒だそうで、数値においてはまったく同等でもあり納得させられました。
高速巡航が得意といいつつ、それを活かした使い方はあまりできませんでしたが、四国から関西へ旅した折、四国の険しい山間道を含むルートで、とくにエコ運転を心がけたわけでもないのに、約800km走って広島で給油したら、52Lのタンクが危険なほどギリギリでもなかったのは驚きでした。ゆったり高速巡航すれば不安なく1000kmは走れそうで、長年ヨーロッパではディーゼルが好まれた理由がわかる気がしました。
ベルランゴや3代目前期のC4に搭載される1.5Lディーゼルは、洗練度においてさらに上を行くようですが、時代の趨勢で次第にその数を減らしていっているらしいのは残念です。

C5エアクロスは、私にとっては初めてのSUVでしたが、カジュアルで、実用的で、高い着座位置からの見晴らしや相応の心地よさがあるのはわかったけれど、そのSUVが一大ブームとなり、ついにはロールスロイスやセンチュリーまでSUVを生産させるに至るほどの強烈な魅力がどこにあるのか、、、その確たるところはよくわからずじまいでした。
こと洗車に関しては車高が高いからフロントガラスを拭くのがギリギリ、屋根は脚立なしではまったく歯が立ちません。長靴を履き、両手にホースとスポンジを持ち、脚立を少しずつ移動させながら、滑ってケガをしないよう慎重に登ったり降りたりを繰り返すのは、洗車の楽しさより大変さのほうが遥かに勝っていました。
PHCに再び話を戻すと、サスペンションがソフトであるのに、山坂で少々ペースを上げたくらいでは姿勢はまったく乱れないばかりか、却って収束するかのように筋力が増し、挙動に一体感が出てくるのはかなり驚きで、その点は両立は目を瞠るものがありました。ハイドロがハイドラクティブになったとき、カーブでロールしないことに驚いたものですが、それいらいの「なにこれ?」でした。
乗り始めの頃より、距離が進むほど乗り心地にアタリがついてきたようで、ある程度距離を重ねたらどうなるのか興味を覚えます。
PHCがハイドロとの違いを最も感じる部分は、ショックを吸収したときの柔らかさではなく、沈んだ車体が復元する時の、飛行機が揚力で上昇するような、あるいは舟が波をいなして前進するような、ゆったりと遅れてくる浮遊感がないところです。
ハイドロに乗る醍醐味と中毒性が、サスペンションが伸びる瞬間にあるのだとすると、それのないPHCに満足されない方がおられても不思議じゃありませんが、同じくそれのない2CVのサスペンションに不満を訴える声はあまり聞いたことがないから、そこは捉え方しだいなのかもしれません。
ハイドロの奥深い官能のためには、いかなる苦労も試練も厭わないこだわりは大いに理解できるし賞賛に値することは間違いないけれど、すべての人がその労苦に耐えられるわけでもないから、スフィアやオイルから完全に手の切れたところにある平和を手に入れ、肩肘張らないシトロエンライフを楽しむぶんには、PHCもそう悪い選択ではないと思います。
軽い操作系、効率のよい走り、ディーゼルの好燃費と余裕のパワー、アダプティブクルーズコントロールを使えば前車に追従して加減速までしてくれるし、昔を思えば圧倒的に壊れないなど、充分に及第点はとれていると思います。
車幅は185cmだからC5やC6と同等で、クルマには一定のサイズを求めたい方や、とくに長距離を走る機会の多い使い方にはかなりオススメの一台ではないかと思います。
いま思い出しましたが、後席はさほど広々とはいえませんが、シートを倒せば、トランクは広大な空間となり、自宅の荷物を処分した際には商用車並みの大活躍をしてくれたことが数回あって、その時ばかりは普通のセダンじゃこうはいかないだろうことを実感しました。そんなことは滅多にないわけですが、大量の荷物を積み込んで走るということは妙に嬉しくて頼もしく感じることも事実で、クルマ好きの琴線に触れるところがあることは確かなような気がします。これはC3の小さなトランクでも、買い物に行くなどしてギッシリ積むのは不思議にウキウキするから、ワゴンやベルランゴのようなモデルが人気なのも、運搬することそれ自体が車の大事な魅力のひとつなのかもしれない、、と思ったりするこのごろです。
C5エアクロスはすでに二代目の時代を迎えていますが、個人的には初代でさえ少々持て余し気味に感じていたボディサイズはさらに大型化され、全幅は実に190cm!を超えている由で、全長も15cmほど長くなったようだから、これを検討する人は、まずこのサイズに付き合っていけるかどうかの覚悟を問われるような気がします。
時流に即してハイブリッドとなっているのは頷けるとしても、組み合わされるエンジンはこの大型車にして1.2Lの3気筒(改良が加えられているとはいえ基本はC3と同じエンジン!)というのは、はじめちょっと信じられませんでしたが、きっと上手くよくできているんでしょうね、、。
