山重電切博多ノ宵月

9月末、充電器に関する投稿で「今どきのバッテリーは長く使うものらしい」というようなことを書いたのに、C5エアクロスのバッテリーが突然死らしいことになりました。

このところ急に冷え込んできたせいか、家電のリモコンとかPCマウスなどの電池がバタバタと力尽き、この感じではクルマも充電をしておいたほうがいいだろう…と充電器を繋いだところ、いつもとは違うおかしな表示が出るばかり。
首をひねりながらドアを開けると、室内は様子がヘンで真っ暗闇、スタートボタンもリモコンキーもまったく反応がなく「うあー、、!」っとなりました。
2CVでひと騒ぎした電気問題が、エアクロスへ飛び火したのか?

光るものがすべて失われて冷ややかに固まったような車内。

しばらく充電を続けるも、直感的に「これは終わっている」と悟ったから、ぐずぐずしても時間の無駄となるだけ、これではバッテリーが復活するとも思えないし、多少しても安心して使えるはずもない、、
すぐにバッテリー店に連絡、向こうから折り返して適合もわかり、さらに在庫もあるというので、一気に購入へと一直線に動き出しました。

このとき、あいにくゴルフが手許になかったけれど2CVは問題なくエンジンが掛かったから、これで行くしかないと覚悟を決めて片道30分ほどの倉庫店まで行き、新品バッテリーをトランクに乗せて無事に戻ってくることができました。
今どき2CVみたいな超時代遅れなクルマでも、いざとなれば実用面での役割を果たし、突然倒れたエアクロスの窮状を救ってくれたところがなんとも愉快であるし少し感動的でした。

バッテリー店の倉庫は、壁一面ご覧のとおりの壮観な眺めです。

昔はハイドロ車が立ち往生したり、つまらぬトラブルで動けなくなったとき「結局最後に頼りになるシトロエンはいつも2CVだ!」と言い合ったものでしたが、そんな談笑がなつかしい記憶と共に蘇ってきたり。
淡々と、騒がず、驕らず、自分のペースで走って人と荷物を運搬できるから、ついでに帰りはホームセンターに立ち寄って枝箒を買ったはいいけれど、これがなかなか入らず、ついに先をぐいと曲げて遮二無二押し込んで帰ってきました。

積み込んでくれましたが「このクルマ用ですか?」と聞かれました。

購入したバッテリーはCCQ内でも定評を得て久しい韓国製(こちらではもう常識になっています)で、博学なSさんによればBOSCHであれVARTAであれ、現在の自動車用バッテリーの大半は韓国の同じ工場で製造されているそうで、その品質は有名ブランド品とまったく遜色ないのに、価格は相当にお安いのが助かります。


交換には例によってducaさんのお手を借りることになり、いつもありがたいことです。
約束の時間に来られて、それでは作業開始というわけでバッテリーの+側ターミナルを確認がてら触られていると、その刹那、あたりに「クー」という周波の音が聞こえて、「えっ、まさか!」という不穏なものがよぎりました。
ちびまる子ちゃんの、顔に数本の斜線が入るあれです。

この音は電気が通じていればこそだから、まさかという気持ちで室内を覗くとメーターには光が戻っており、エンジンボタンを押すと「クルルル、ブオン!」とかかりました。
なんたることか!!!

最近の車のバッテリーターミナルには下のような赤いプラスティックのカバーがありますが、そのままでは充電器のクリップが咥えにくいので、これを上に開けたのでしたが、同時にターミナルから離脱する作りになっているとも知らず、それで電気が途絶したわけでした。
そんな事だとは気づかぬまま、ただもうバッテリーの寿命もしくは突然死!とひとり決め込んで、慌てふためいて上のような怒涛の行動に突入したわけでした。

赤いキャップを開けると同時にターミナルから外れる仕組み、、、だったのですが、知らなかったもん!

ducaさんは、目の前のこの喜劇に呆れ果てられたことと思いますが、一呼吸おいて気を取り直されたのか「じゃあ、これ(新品バッテリー)は返品しましょう!お店に電話してみてください」とのこと、「え、電話ですか?」「はい、とにかく電話!」「はぁ…」、、私にしたらとんだ無駄足を踏ませてしまったわけだから、ここはもう言われたとおりにするしかありません。
で、電話をかけはじめると、背後から「ま、たぶん無理でしょうね、この手の返品は99.9%ムリでしょう!」とか「だめだったら交換しましょう!」という声が次々に被さってきます。

先方に事情を話してみると、「はい、では領収書と、新品の確認ができれば返品大丈夫です。土日祝日は休みです」と言われ、まだ箱を開けてもいない状態でもあったから、連休明けに返しに行くことに。
さて、せっかく来ていただいていることでもあるから、その日は積み残しだった他の作業をしていただき、あとはお茶して雑談することになり、なんとも申し訳ない次第でした。

私としては、すでに目の前に新しいバッテリーがあるのだし、5年使ったのだからこの際交換しておいたほうが良策では?という考えもあったのですが、交換作業は周辺部分まで脱着する必要があるようで、見た目ほど簡単ではないらしいので、それを考えたら、まあ敢えて今でなくてもいいかな?、、というところに落ち着きました。
ちなみに、上記Sさんの情報では、新車時についているバッテリーは早めに交換したほうがいいとのことでもあり、今後はあまり横着に構えないほうが良さそうです。

翌日、再度充電して2時間後に見に行ったら、はやくも「FUL」になっていたので、いちおうは元気なのかもしれません。

〜以上、本来はバッテリー交換のネタにするつもりだったのですが、自分でもかなり一途に気合を入れた行動だったのに、最後はあっけないオチで砕け散ることになりましたました。

今年は『べらぼう』を見ているもんだから、黄表紙じゃねえけれど「おもしれぇ!」って笑っていただけるんなら幸い、ちなみに山重ってぇのはあっしら馴染みの、あの印のことでごせえますよ。

それから-8

9月なかば、zewsさんが福岡お茶会に参加されるにあたって、2CVのリクエストをいただきました。しかし9月はまだ暑さも厳しいから難しいことをお伝えしつつ、万にひとつを考えてガソリンだけは入れておこうと、敬老の日の夜、約3ヶ月ぶりに少し走らせました。

エンジンは最初のアタックで掛かったものの、寝起きということで始めはソロソロと慎重に走りましたが、これといって不都合はないらしく、思いのほかケロッと機嫌よく走ってくれました。
なんといってもducaさんのすばらしいキャブ調整その他のお陰が大いに効いているけれど、2CVが生まれながらに頑丈であることも疑えないところで、乗って愉快なだけでない、根本にある逞しさもこの車の大きな特徴であり存在理由であったことを思わないではいられません。

今でこそかわいらしい趣味の車として生きながらえているけれど、半世紀にわたってフランスを中心に軽便な移動手段として無数の2CVとその派生型が使われた実績があり、まさに労働車であったことが偲ばれます。

…そんな2CVの逞しさとは真逆の私はというと、暑いのは人一倍苦手であるし忍耐力もないから、腰を上げるまでかなりの決心を要しましたが、それでも動き出してしまえば走り回りたいほうで、この際あちこちまわってみようと思ってもいたけれど…やはり甘くはありませんでした。
日が落ちているとはいえ、湿気を含んだ重い風(というより熱風に近い)を浴びて全身くまなく汗ばんでくるともうダメで、帰って水浴びでもして着替えたいという気持ちに勝てなくなります。

かくして、ひさびさの夜の散歩は給油を含む1時間足らず、わずか20kmほどで終わって再び動いていませんが、さすがに10月に入るとだいぶ過ごしやすくはなりました。

じつは巨匠号にはスペアーキーがなく「どこかにあるはずだが行方不明」とのこと、見つかり次第ご連絡いただくことになっていましたが、一向にそんな気配もないし、ひとつきりでは心もとないからネットでブランクキーを購入していました。
しかしカットを頼もうにも、街の鍵屋に問い合わせると片っ端から断られました。理由は「カット作業だけは受けていない」「万一失敗した場合の責任が持てない」というもの。

夏前のことで、どうせしばらく乗らないからと中断していましたが、最近になってようやくベテランの職人さんがやっている個人経営の店に辿り着き、先週ついに削ってもらいましたが、2CVはエンジン、ドア、給油口がそれぞれ別のキーで、大小3本がワンセットとなるから、工賃も3本分。

鍵屋のご主人は「これは(エンジンキー)珍しいですねー!」などと、手を動かしながら大いに雑談してくる人で、ミニクーパーが同じですよとか、イタリア車は鍵もいい加減であれは困るとか、ドイツ車はさすがだとかの話をされますが、最近の車は我々もわからないことばかり、中古車店などから出動要請があってもすぐに作業ができない、盗難も非常に増えている、など。

そこで思いがけないことを聞いたのですが、アイドリングストップ機能が普及するにつれて、それ由来の事故がかなり増えたのだそうで、あー、だから廃止の方向に向かっているのか!とひとり得心しました。
私はてっきり、わずかの燃料節約とバッテリーやスターターの消耗が割にあわない故のことだろうと思っていたし、お茶会などでも大方そのような見立てだったから、これは思いがけない話でした。

いわく、特に交差点内の事故がずいぶん増えたらしく、エンジン停止からペダルを踏み換えて再始動→発進するまでの、ひと呼吸ふた呼吸が遅れることで発生する事故とのことで、大いに納得!
なるほど事故というのは、ほんの一瞬の呼吸の掛け違えみたいなことが引き金になるもの。

「これは警察も自動車メーカーも絶対に言いませんけど、みんな知ってますよ!」と業界では常識みたいな話っぷりだったから、おそらく保険会社のクレームなどもあり廃止へつながったのかも、、、ま、真偽の程はわからないし、あるいはさも本当らしい都市伝説かもしれませんが、妙に納得してしまいました。
〜そうこうするうち、鍵のカットが終わりました。

↑おまけ。新しい鍵のキーホルダーを探していたら、以前ものが抽斗から出てきました。Xm〜C6で長く使っていたものですが、白のボディは擦り切れてほぼ2トーンカラー状態。2CVだからこれを使おうかと思ったものの、気がついたらなくなっていそうで今さら不安になり、ひとまず古い鍵はスペアーとして紐で結わえて一緒に抽斗に戻しました。

ちなみに「アイドリングストップ 廃止」で検索すると、AIによるいくつかの回答が出てきますが、事故のことは一切触れられておらず、「停車時のエンジン再始動時の音や振動、発進時のタイムラグ、停車中のエアコンの効きが悪くなることなど、ユーザーから不満の声が多く寄せられています。また、右左折や一時停止など、スムーズな発進をしたい場面でアイドリングストップが煩わしく感じられることもあります。」とあるから、いかにも言外に真実が秘されているようにも思えますがどうでしょう?

充電器

何の話からだったか、kunnyさんにバッテリーの充電を薦められ、充電器を貸していただくことになり、いわれるままに充電してみました。

今どきの車はアイドリングストップ付きが多く、AGMという従来型より多少タフなバッテリーがついていて充電の方法も違うようですが、お借りした充電器はそんな時勢を反映して新旧数種の自動車用バッテリーに対応しており、電流も選択式で0.8A〜8Aまで4段階あって、「2Aぐらいでゆっくり充電するのが良い」とのこと。

一晩かけて充電が完了すると、はじめ容量60%と表示されていたのが「FUL」になり、電圧も13以上になるのは非常に気分がよろしく、2CVまでフル充電が完了すると、なんだかいいようのない満たされた気分になるのが不思議でした。
価格もそうお高いものではないから(数千円〜1万円以内)、これはぜひ!という気になり、同じものをネットから購入しました。

それを聞くなりSさんは、そんなことをするより、安い韓国製バッテリー(信頼性は確認済み)を定期的に交換したほうがよほど賢明であると言われ、たしかにそれはそうなんだけれど、バッテリー交換といっても交換作業があり、今の車はハイテク満載だからそれに応じた手順もある、さらには交換後の処分まで考えると結構な手間はかかるし、あの腰をやられそうな重さだけでも気軽とは言えないから、差し当たり充電で事足りるものならそれも有り難く、それなりに意味はありそうな気がして注文へ。

翌日には玄関に置き配されているスピードに驚きつつ、すぐに必要というわけでもなく、充電は済んだばかりだから当分は使わないだろうし、逆に頻繁に使うようならバッテリーが要交換であろうから、そこはSさんの言われるとおりなのです。しかしkunnyさんの考えにも一理があって、頻繁に乗らない車は補助的に充電したほうが安心とのこと、2CVのような不定期車を抱えている身には、その点でもやはり持っておいたほうがまあ安心だろうというところ。

その後しばらくして、kunnyさんから送られてきた国沢光宏氏の動画によると、今どきのバッテリーは「2〜3年で交換するものではない」という考え方もあるようで(使い方にもよるとしても)、さらに充電は延命復活効果もあること、新車から3年の車検で交換するのは時期尚早ということなどが解説されています。

自分が充電器を買ったからといって、すぐこういう説に靡くのではないけれど、でもまあ一定の説得力はありました。「国沢ちゃんねる バッテリー」と検索すると出てきます。

ちなみに、お借りしたkunnyさんの充電器は、本体からクリップまでのコードが短いと使いづらいというので、コードの継ぎ足し加工がされていましたが、概して規格品はなんでもが余裕がないから、この際それもマネしておこうと線の太さなども教えていただき1.25mmのコードをホームセンターから買ってきました。

で、単純に銅線を撚り合わせて絶縁テープを巻けばいいだろう…ぐらいに思っていたら、kunnyさんは「それはマズい!」との仰せで、どうせ私のことだからハンダ付けの道具など持っていないだろうからと道具一式を揃えて来宅され、その作業までやっていただきました。50cmぐらいで良いと聞いていたのを、失敗もあろうかと大事を取って80cmにしたら、べつに大事を取る必要もなかったようで、結果かなり余裕の長さとなりました。

(写真上)せっかくなので試しに充電。前回は12時間以上かかったのが、その後数週間しか経っていないためか2時間半で終了、スタート時は12.8だったのが終了時には13.6に。

2025年

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。

暮れに何という偶然か、これまで見たこともないような大玉の立派なレモンをいただきました。
昨年は「シトロエンの意味がレモン」であることを知り、ネット翻訳のオランダ語で[レモン→citroen]とそのままズバリ出てくることに感激したのは記憶に新しいところ。

私達が喜び勇んで乗っていたのはレモンで、レモンクラブだったのかと思うと可笑しくなります。
今年も良い年でありますように!

Chirac映画館-5

ことしも残りわずかとなりました。
場所柄をわきまえ、映画ネタはやはり自重せねばと思っていたところ、思いがけず好意的なメッセージをいただくなどして、またご案内を続けることになりました。
以前の、滋味深い人間ドラマからだんだん遠ざかって、少し思い切ったチョイスですがよろしかったらどうぞ。


▼『幻滅』 バルザックの同名小説を原作とする2023年のフランス/ベルギー映画、監督:グザヴィエ・ジャノリ
19世紀前半、主人公の文学青年リュシアンは、田舎の印刷場で働くかたわら詩作に励むが、彼の愛人にして支援者である貴族の夫人とパリへ駆け落ちし、華やかで残酷、悪意と虚飾に満ちた、喧騒の渦中へ身を投じることに。
はじめは貴族たちの嘲笑を買うような都会のルールに疎い田舎者でしたが、人づてに新聞記者の職を手にしたことから社会の裏を教えられ、呑み込みのよいリュシアンは、めきめきと頭角を現して奸計をめぐらすまでになり、生き馬の目を抜くようなパリを舞台に、衆目を集める存在へとのし上がります。
もっぱら自分の才に頼んで、欲望の赴くまま、傲慢と放蕩のかぎりを尽くしますが、その内実は借金まみれで崖っぷち。
次々に野望を成し遂げるリュシアンですが…。
フランス映画には珍しく絢爛瑰麗な画面で、隅々まで作り込まれた大小道具や衣装などのビジュアルも楽しめましたが、やはり原作の力が根底を支えているのだろうと思います。セリフが早すぎて読むのがついていけないところがあり(でも吹替えは絶対にイヤなので)、すぐにもう一度観てしまいました。


▼『Summer of 85』 2020年、フランソワ・オゾン監督
『幻滅』で主役をつとめたバンジャマン・ヴォワザンの関連映画で何気なく観始めたところBL映画だったので、これはどうかなぁ…と躊躇しましたが、映画としては見応えのある内容であったことと、なによりシトロエンがこれでもかとばかりに登場する作品だったので、やはりお知らせしないわけにはいきません。
ノルマンディ地方の美しい海岸地方を舞台に、1985年のひと夏におこる若者の純粋とエゴが交錯する恋愛悲劇で、車はあくまで背景での小道具ではあるものの、あちらこちらにシトロエンが出まくります。
しかも、時代考証もよくされていて、80年代の、すなわちXM/Xantiaがまだ存在しなかった頃のシトロエンがぞろぞろ登場します。
海辺の道路に置かれていたCXが、別のシーンでは町中を走ってみたりと、使い回しもされているのでしょうが、ほかにDS、アミ6、GS、BX、2CVなど、わずかな瞬間ですがこれほど出てくる映画は珍しいと思います。
この時代の雰囲気を出すために全編フィルム撮影されたらしく、それもこの映画の美しさに一役買っているようです。


▼『ピアニスト』
個人的に、クルマと並ぶもうひとつの趣味がピアノなので、そのタイトルにつられて観たところ、これまた想像を絶する内容でびっくりでしたが、しかし面白い作品だったので、『Summer of 85』以上に迷いましたがご紹介することに。
舞台はウィーン、周囲から尊敬を集めるピアニストで音楽院の教師でもあるエリカは、子供の頃から音楽一筋、人生をピアノに捧げ、口うるさい母親との孤独な二人暮らし。シューベルトの大家として名を馳せ、いつも凛として冷淡、娯楽や恋愛など無縁といわんばかりの峻厳で近づきがたい女性ですが、その裏にはとてつもない秘密の一面が隠されています。主役を演じるのは、知る限り少し変わった役どころの多いイザベル・ユペールですが、この役はまさに本領発揮と思われました。
シトロエンの贅沢なクーペの名の本当の意味がこういうことかと思うと、さすがに複雑な気分にもなりますが、かつてのハイドロシトロエンのオーナーの屈折した心の奥には、クルマに向けてほんの少しこのような苦痛と快楽とが織りなす喝仰の念が潜んでいたのか…。
2003年、フランス/オーストリア、監督はミヒャエル・ハネケ


▼『パーフェクトマン 完全犯罪』
作家志望のマチューは運送や遺品整理の仕事をしながら自作を出版社に送っているが、相手にされず鬱屈した日々を過ごしています。ある日、身寄りもなく孤独死したという元軍人の部屋を処分をしていると、アルジェリア戦争で綴られた生々しい日記帳を発見。それを密かに持ち帰り、自作として作り変えて送ってみたところ、たちまち大ヒットして作家デビュー。世間の注目を浴びて、生活は一変します。
3年が経過、美しい恋人にも恵まれ、南仏の壮麗な別荘に滞在する彼女の両親からも才能ある作家として歓迎されますが、次作はまったく書けておらず、出版社には前借りまでしており原稿の催促に追われていることもひた隠しに。しだいに塗り重ねたウソもほころびかけたころ、故人の友人で日記の存在を知る男が現れ、絶体絶命の窮地に追い込まれますが…。
主役を演じるピエール・ニネの内的でメリハリのある演技と、しなやかなフランス語が印象的。
2015年フランス映画 監督はヤン・ゴズラン

オリンピック

パリ五輪の開会式では、開始間もないシーンで聖火を手にしたジダンが街中を駆け抜けて行く中に、2CVや複数のDSが出てきて「オオ!」っとなりました。

万一に備えて録画していたので、あらためて見てみると1960年代のパリの風景を表現したのか、ほかにもルノー4やパナールまで出てきて、ほんのわずかのシーンをチェックするのに忙しいことといったらありません。

驚いたことには、その中になんと初代のダルマセリカやクジラクラウンが紛れ込んでおり、これには我が目を疑いました。
何か意図するところがあったのか、ただ単に古い車をエキストラとしてかき集めただけなのかわかりませんが、このシーン、当日の悪天候に比べるとお天気は快晴、どう考えても事前に収録されたものでしょうね。

実際はすでに曇天で、ほどなく無情にも雨粒が落ちはじめ、さらに時間が経つほどにそれは激しいものとなって、その中でダンスを始め必死にパフォーマンスに打ち込む大勢の人が気の毒なほど。
選手たちの乗る船もときに大きく上下に揺れるのがあったりで、きっとDSの乗り心地どころではなかったでしょう。

そんな激しい雨が打ちつける中、フランス人ピアニストのアレクサンドル・カントロフが、ずぶ濡れのピアノで自身もずぶ濡れになりながら弾いていたのは、皮肉にもラヴェル作曲の『水の戯れ』で、なんとも奇妙な光景でした。

一部の演出にはいろいろと批判もあるようですが、随所に散りばめられたそのセンスはやはりさすがでした。

壮烈な夕焼け

日曜19:30ごろのこと、とあるホームセンターから外に出ると、西から猛烈な光が射していて、これまで見たこともないような激しい日没でした。

他の人達も口々に「えー、何あれ?」といいながら、何人もが立ちすくんでしまい、きれいというよりなにか凶事の兆しのようで、あわてて写真を撮りました。
トリミング以外、もちろん一切加工はしていません。

シトロエンとは関係ないことですみません。

2024年

あけましておめでとうございます。
昨年はたいへんお世話になりました。

この目まぐるしい変化の時代、いつまでシトロエンをこれまでのように楽しめるのか想像もつきませんが、皆様のお知恵を借りながら、一日でも長くシトロエンライフを続けていきたいものですね。

CCQは本年4月をもって32周年を迎えます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

◆昨年末には巨匠がお亡くなりになるという衝撃が走りましたが、最近では巨匠のことをご存じないかとも多くおいでのことと思い、[CCQ小史]→[コラム]に[巨匠の思い出]として掲載しましたので、毎度の駄文でお恥ずかしい限りですが、よろしければぜひ御覧ください。
巨匠の人となりをわずかでもお伝えできれば幸いです。

◆CXオーナーのHさんによれば、今年はCXデビュー50週年とのこと。ああ、そうか!と思いさっそくCGの棚へ。

左は1974年10号、シトロエンのニューモデルとしてポール・フレールによる5ページに及ぶCXの紹介記事。右は翌1975年に日本上陸したCXが表紙となった8月号で奥にはDS。ちなみにこの号ではデビュー間もないポルシェ930ターボや、シトロエンのハイドロニューマティックサスペンションを採用したスーパーメルセデスの450SEL6.9の海外インプレッション、はたまた初代ゴルフの長期テスト開始など注目すべき記事が並んでおり、まだ免許もないのにやたらときめいていたあの頃が思い起こされました。

予期せぬオドロキ

Amazonプライムに『アルフォンス〜君の男〜』というパリが舞台のドラマがあります。
その内容をここに書くのは、ややシトロエンから逸脱するようで憚られるのですが、後で繋がるのでお許しください。

主人公のアルフォンスは既婚者で、うだつのあがらないセールスマン。
念願だった家を買い、長いローンを抱えた矢先に会社をクビになり、妻にも言えず路頭に迷いますが、めぼしい職歴も能力もない40代半ばの男には、思うような仕事もありません。

彼は、幼いころ母親が家を出て行ったため父親から育てられましたが、女たらしという以外なんの取り柄もない父親は「男娼」として生計を立て、それで息子を大学まで行かせたツワモノで、その顧客はもう若くはないセレブの女性達。

破天荒な生き方をしてきた父親は、苦境に立つ息子を自分の「仕事」へ引き入れ、身なりから姿勢、声の出し方、詩の暗誦まで指導して自分の顧客の元へ送り込みます。
はじめはしぶしぶだったものの、やがて親譲りの才能が花開き、気がつけば顧客から顧客へと忙しく飛び回るようになり、すっかり魅力的な男になっていくのが笑えます。

その顧客の一人が政府高官の女性で、シトロエンは政官御用達という一面もあるのかC5Xが登場!
ついには、アルフォンスがC5Xを運転してパリ市内を走り、急げと云われて飛ばしたら警察に捕まるシーンがあったりと、ドラマ自体も面白いのですが、こんなオマケがつくとは思いもしませんでした。

もうひとつ、『アナザー』という2016年のフランス映画で、こちらは難解で見通すだけで疲れましたが、ワル社長の車がなんとSMでびっくりしました。さりげなくルノー16やBMWの02が出てくるあたり、時代設定が1970年代のようでした。

SMの登場シーンは短く、全編を通じて出てくるのは古いアメ車のサンダーバードなのですが、その素晴らしいコンディションとうっとりするようなボディカラーの美しさだけでも見た甲斐がありました。

追記;ちょっと調べていたら、このドラマに出てくるアルフォンスの奥さん役はシャルロット・ゲンズブールで、彼女はその名のとおりセルジュ・ゲンズブール(20世紀後半にパリで活躍したアーティスト、とりわけスキャンダラスな歌で話題となった「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」の作者)の娘さんで、その母親はあのジェーン・バーキンでした。どうりで面立ちにどこかで見たような気がしたのですが、大いに納得でした。現在ジェーン・バーキンの名は歌手や女優としてというより、あの有名ブランドのハンドバッグの由来としてのほうが知られているのかもしれませんね。
ちなみにセルジュ・ゲンズブールは現在のウクライナ出身、ジェーン・バーキンはイギリス、もっと見渡せば画家のシャガールはロシア、作曲家のショパンはポーランド、さらには日本の藤田嗣治など、いずれも他国からパリに移り住んで根を張り世界的存在へと登りつめた大物で、こういう人達は数知れません。パリという街にはそんな特別な土壌や力があることを思うと、ここで生まれたシトロエンが大衆車にもかかわらず他車とは一線を画していることも、当然のような気もします。

慣れない雪

今年の寒波はいつもとはいささか違っているようで、厳しい寒さが続いています。
普段なら雪とはほとんど縁のない福岡でも、24日は夕方から一時は強い風雪が吹き荒れました。

写真はたまたま外出していて、帰宅中の信号停車中に撮ったものですが、福岡市内でこれほど道が白くなるのはそうはありません。

雪の量はさほどでもありませんでしたが、これまでなら降ったらすぐにベチャベチャになるのに、今回は気温が氷点下だったせいかサラサラで溶けないので、道はみるみる白くなるという珍しい光景でした。

道路の白線も見えないし、北国のように雪に慣れていないのでみんなビビっているようで、おそるおそる30〜40km/hで走っていましたが、なんとか無事に帰り着きました。

オールシーズンタイヤも一考の余地ありと思わせる経験でした。