Amazonプライムに『アルフォンス〜君の男〜』というパリが舞台のドラマがあります。
その内容をここに書くのは、ややシトロエンから逸脱するようで憚られるのですが、後で繋がるのでお許しください。
主人公のアルフォンスは既婚者で、うだつのあがらないセールスマン。
念願だった家を買い、長いローンを抱えた矢先に会社をクビになり、妻にも言えず路頭に迷いますが、めぼしい職歴も能力もない40代半ばの男には、思うような仕事もありません。
彼は、幼いころ母親が家を出て行ったため父親から育てられましたが、女たらしという以外なんの取り柄もない父親は「男娼」として生計を立て、それで息子を大学まで行かせたツワモノで、その顧客はもう若くはないセレブの女性達。
破天荒な生き方をしてきた父親は、苦境に立つ息子を自分の「仕事」へ引き入れ、身なりから姿勢、声の出し方、詩の暗誦まで指導して自分の顧客の元へ送り込みます。
はじめはしぶしぶだったものの、やがて親譲りの才能が花開き、気がつけば顧客から顧客へと忙しく飛び回るようになり、すっかり魅力的な男になっていくのが笑えます。
その顧客の一人が政府高官の女性で、シトロエンは政官御用達という一面もあるのかC5Xが登場!
ついには、アルフォンスがC5Xを運転してパリ市内を走り、急げと云われて飛ばしたら警察に捕まるシーンがあったりと、ドラマ自体も面白いのですが、こんなオマケがつくとは思いもしませんでした。
*
もうひとつ、『アナザー』という2016年のフランス映画で、こちらは難解で見通すだけで疲れましたが、ワル社長の車がなんとSMでびっくりしました。さりげなくルノー16やBMWの02が出てくるあたり、時代設定が1970年代のようでした。
SMの登場シーンは短く、全編を通じて出てくるのは古いアメ車のサンダーバードなのですが、その素晴らしいコンディションとうっとりするようなボディカラーの美しさだけでも見た甲斐がありました。
追記;ちょっと調べていたら、このドラマに出てくるアルフォンスの奥さん役はシャルロット・ゲンズブールで、彼女はその名のとおりセルジュ・ゲンズブール(20世紀後半にパリで活躍したアーティスト、とりわけスキャンダラスな歌で話題となった「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」の作者)の娘さんで、その母親はあのジェーン・バーキンでした。どうりで面立ちにどこかで見たような気がしたのですが、大いに納得でした。現在ジェーン・バーキンの名は歌手や女優としてというより、あの有名ブランドのハンドバッグの由来としてのほうが知られているのかもしれませんね。
ちなみにセルジュ・ゲンズブールは現在のウクライナ出身、ジェーン・バーキンはイギリス、もっと見渡せば画家のシャガールはロシア、作曲家のショパンはポーランド、さらには日本の藤田嗣治など、いずれも他国からパリに移り住んで根を張り世界的存在へと登りつめた大物で、こういう人達は数知れません。パリという街にはそんな特別な土壌や力があることを思うと、ここで生まれたシトロエンが大衆車にもかかわらず他車とは一線を画していることも、当然のような気もします。